今回修理のためにコンデンサを交換するPCDPはこちら、松下電器産業株式会社(現パナソニック)製SL-XP50です。1988年発売の製品で、私のこのSL-XP50は1989年製造の後期出荷分のものです。
うきょうたかしのPCDP&CD日記2011/01/07記事「Panasonic SL-XP50を直しました。」
上のリンク先に有るとおり以前修理記事を掲載しましたが、付け焼刃的な対応であったためやはりすぐに問題が出ました。よく有るパターンですが、CDが回転しないor回転しても凄くゆっくりで再生は始まらない、という状態に陥りました。
見た目からしてヤバいというコンデンサーはもうなかったのですが、それが最大要因であることは間違いないでしょう。
私のこの個体ははんだの状態が悪く、以前たった数個交換するだけでも溶けないわ吸えないわで物凄い時間と精神力を要しました。
そういったことで今回の作業も億劫ではあったのですが(だから以前全部交換しなかったのです。)、もうどうしようにも再生しなくなってしまったので諦めて作業に取り掛かるほかありません。もし失敗してしまったとしても何もしないままでは直ることはありませんから、やって壊そうというくらいの気持ちでやりました。
さてこのSL-XP50ですが、私がコンデンサ交換作業を渋っていたのにはもう一つ理由があります。
それはみなさんもうお分かりでしょう、「絶望的に内部クリアランスが無い」ということです。
サイト掲載写真からはあまり分かりませんが、とにかく中はぎっちぎちにつまっているのです。
SL-XP50は単三使用機種の完成形であると私は考えています。それは比類なき音質は勿論、本体の質感から耐久性、サイズ、あらゆる面で非の打ち所が無い機種だからです。
しかしこの驚異的なコンパクトさゆえ、中の空きスペースは皆無に近く、コンデンサ交換が非常に困難なのです。
SL-XP50に限らない話ですが、純正製品に使用されているものと同じサイズで同じ耐圧・容量のコンデンサはどこのメーカーも製造しています。しかし私たち一般ユーザーは入手出来ないものが多くあります。
中のスペースに余裕があれば純正と同じサイズでなくても問題ありませんが、このXP50は特に余裕がありません。取り外してから入るものが無いではどうしようもないのです。だからだましだましでも動いているうちは全交換に着手できなかったのです。
そういうわけでしたが今回はもう騙せない域まで来てしまったので全部交換するほかありません。
多少アレな部分も有りますが配置など参考になればということで、いつもよりも多めに写真を掲載することにしました。
SL-XP50は基板が二層構造になっています。
下の写真は分離したところです。液晶画面が付いている左側が下層基板SUPD2600B(以下「下基板」)で、右側の小さいほうが上層基板SUPD2600A(以下「上基板」)です。
こちらが下基板。コンデンサが密集しています。金属板はグラウンドラインとOPAヒートシンクを兼ねているようです。
こちらが上基板。コンデンサは少ないですが右側の変な16V10uFとバイポーラコンが気になります。
各基板だけを見ると「何だ大したことないじゃないか」と思われるかもしれません。しかしこれを向かい合わせてセットするのです。ビックリするほど空間が無いのです。
ここで私のサイトでお馴染み、あまり役に立たないと評判の「コンデンサ一覧」を見てみましょう。
SUPD2600B(下基板) 4V220uFがHPカップリングコンです。
番号 | 耐圧、容量 |
C329,330 | 4V220uF(松下KS青) |
C345 | 6.3V47uF(松下KS黒) |
C14,340 | 6.3V100uF(松下KS黒) |
C17,305,344 | 6.3V330uF(松下KS黒) |
C11,12 | 10V47uF(松下KS黒) |
C13 | 10V47uF(三洋OSCON) |
C321,322 | 25V4.7uF(松下KS青) |
SUPD2600A(上基板) C* 16V10は初期個体には付いていないようです。同じく初期個体でC119が35V2.2uF-BPのものを確認しています。
番号 | 耐圧、容量 |
C141 | 6.3V47uF(松下KS黒) |
C137 | 6.3V47uF(三洋OSCON) |
C142 | 6.3V100uF(松下KS黒) |
C132 | 10V47uF(松下KS黒) |
C119 | 16V4.7uF BP(松下KS黒) |
C* | 16V10uF(松下KS黒) |
C102,104 | 50V1uF BP(松下KS黒) |
実は電池に近い4V220uFと6.3V330uFの計三本については、ケースのくぼみがあってそこを利用することにで多少大きめのコンデンサも装着することが可能だったりします。が、それでも通常品を縦に入れるとつっかえます。
コンデンサの選定は空きスペースや性能を考えてかなり悩みました。330uFのところは6SEP150Mでも大丈夫じゃないかということで直前までそれのコースでした。
でも付けるコンデンサよりもまずは取り外すことが先なので外してからゆっくりと考えましょう。
上基板は特に厄介なところが無いのでちゃっちゃと取り外します。が、今回の例にあるように後期のものは16V10uFが変な位置についているので、ここだけ注意して作業しましょう。
要注意なのは下基板です。先の写真を見てもらえれば分かりますが、金属板を外さないと作業が難航します。ハメコミに見えますがそうではありません!
基板にはんだ付けしてありますので力任せに外そうとすると金属板や基板を壊します。
下の写真の赤矢印部分で基板に接続されていますのでここのはんだを吸い取ってやれば簡単に外れます。
(写真では既に取り外し済み。他の部分と間違えないよう要注意。)
金属板を外せばあとはいつも通り取り外せると思います。
かなりつまっています。金属板の有るところは高さにもより一層の制約が出てくるので要注意です。
上基板は省略しましたが無事に全てのコンデンサを外すことができました。基板表裏のクリーニングを忘れずに行ったらいよいよコンデンサ取り付けです。
早速ですがいつものコンデンサ交換対応表から見ていきましょう。今回は基板が二枚有るので闇雲に取り付けるとあとでちゃんと収めることが出来なくなってしまいます。入念にコンデンサ配置の兼ね合いをチェックしながら作業を行わないといけません。
ちなみに今回多用している5ミリハイトの超小型コンデンサーは2011/3現在千石では東信工業UTCXとニチコンMWが、共立電子では松下KS(黒)が、三栄電波では日本ケミコンSRE/KREが入手できます。いずれもフルラインナップではないため入手できない耐圧・容量のものがあります。
純正と交換用のコンデンサは以下の表の通り。(SUPD2600B 下基板)
番号 | 純正コンデンサ | → | 交換コンデンサ(全て新品) |
C329,330 | 4V220uF(松下KS青) | 4V220uF(ルビコンBlackGate-PK) | |
C345 | 6.3V47uF(松下KS黒) | 16V47uF(松下KS黒) | |
C14,340 | 6.3V100uF(松下KS黒) | 6.3V100uF(松下KS黒) | |
C17 | 6.3V330uF(松下KS黒) | 6.3V330uF(三洋OSCON SEP) | |
C305,344 | 6.3V330uF(松下KS黒) | 6.3V330uF(日本ケミコンKMG) | |
C11,12 | 10V47uF(松下KS黒) | 16V47uF(松下KS黒) | |
C13 | 10V47uF(三洋OSCON) | 16V47uF(三洋OSCON) | |
C321,322 | 25V4.7uF(松下KS青) | 35V4.7uF(松下KS黒) |
純正と交換用のコンデンサは以下の表の通り。(SUPD2600A 上基板)
番号 | 純正コンデンサ | → | 交換コンデンサ(全て新品) |
C141 | 6.3V47uF(松下KS黒) | 16V47uF(ニチコンMW) | |
C137 | 6.3V47uF(三洋OSCON) | 16V47uF(三洋OSCON) | |
C142 | 6.3V100uF(松下KS黒) | 6.3V100uF(日本ケミコンKRE) | |
C132 | 10V47uF(松下KS黒) | 16V47uF(ニチコンMW) | |
C119 | 16V4.7uF BP(松下KS黒) | 25V4.7uF BP(ニチコンMUSE ES) | |
C* | 16V10uF(松下KS黒) | 16V10uF(松下KS黒) | |
C102,104 | 50V1uF BP(松下KS黒) | 50V1uF BP(ニチコンMUSE ES) |
いつものような統一感が無く、銘柄がごちゃ混ぜなのは勘弁してください。ニチコンMWはオーディオ用を謳っていますが正直なところ全然ダメなので交換コンデンサの選定には松下KS黒か日本ケミコンSRE/KREをオススメします。
上基板・下基板とも、上下や隣同士との兼ね合いを考える必要の無いところから付けていきましょう。
下基板は以下の写真のようになりました。
特に複雑なところはありませんが、6.3V330uFのKMGを寝かせる必要があります。特にC344のほうは上基板・ケーブル・トラバースとの兼ね合いが有るのでこの位置でなければ絶対に収まりません。
上基板は汚いですがこれしかありません。5ミリハイトのBPコンデンサが欲しいですよ、ホント。
干渉や挟み込み、ショートなどに気をつけて両方の基板をドッキングします。
ギリッギリ収まりました・・・感動です。
線を引っ張った50V1uF-BPの2本はうまいこと以下の赤い位置に来るようにします。
トラバースユニットがちゃんと装着できることを確認します。先にあげたKMGもギリギリ収まっています。
これでやっとSL-XP50のコンデンサを全て交換することが出来ました。
かなり神経すり減らしました。古いはんだがまるで溶けないわ吸えないわスルーホールに詰まるわで大変でした。
こうしてリフレッシュが完了したSL-XP50。電池を入れてCDをポンと装着・・・
動作確認までのこの瞬間はいつになってもどきどきするモンです。
動いた!作業は成功です。動作も快調、音も素晴らしい!
このSL-XP50は私の130を超えるコレクションの中でも頂点を極める一台です。しつこいようですが比類なき音質、単三電池駆動という汎用性の高さ、金属ボディーの質感と丈夫さ、際立つコンパクトさ、これぞまさにPCDPの完成形であるとは思いませんか?